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1: 2021/04/11(日) 19:38:14.39 _USER9
ふたまん2021.04.11
https://futaman.futabanet.jp/articles/-/120438

国民的RPG『ドラゴンクエスト』シリーズの音楽を手がける音楽家、すぎやまこういち氏が4月11日で90歳を迎えた。シリーズ第1作『ドラゴンクエスト』がファミコン用ソフトとして発売された1986年、当時の小学生たちの間で、すぎやまこういちという音楽家の名前を知っている子どもはほとんどいなかったに違いない。ただ、その評価はドラクエのカセットを本体に刺し、電源を入れた瞬間に一変したはず。

■ファミコンからオーケストラが流れた!?
 ファミリーコンピューターに積まれている音源は、PSG音源と言って最大で3つまでしか同時に音を出すことができない。ノイズパートを入れれば正確には4つだが、音色もチープな機械音だ。

 音程のある音色を3つまでしか使えないとなると、1つはメインメロディ、1つは低音を支えるベース、自由に動ける音はたった残り1つということになる。多くのゲームはここに敵を撃破する音やジャンプする音が加わるので、敵をたくさん撃破している間、音楽からベース音が消え細い音になる。ファミコンを遊んだことがある世代の人なら誰でも一度は経験していることと思う。

 そんなこともあり、その時代のゲーム音楽はあくまで2~3の音数を前提に、ゲームのBGMのために作られた、アレンジされたもの。という印象だった。のちのち豪華にアレンジされたサウンドトラックが出たりもすることもあったが、あくまで始まりはゲーム音楽で、それに多重アレンジを加えたという順序である。

 だが、すぎやま氏がドラゴンクエストに載せた音楽は、初めて聞いたときから、まず壮大なオーケストラ演奏ありきでそれをPSG音源に落とし込んだもの、という順序を感じた。

■2つの音を超高速で連打することで生まれる響き
 では具体的に、なぜそう聞こえたのか。けしてドラゴンクエストだけが良い音源を使っているわけではない。同じPSG音源。3つの音というルールの中で形成された音楽だ。ここには発声数の制限という縛りが生んだ、すさまじい工夫が織り込まれているのだ。

 たとえば良曲ばかりのドラゴンクエストシリーズの中でも神曲と言われている『ドラクエ3』のラスボス・ゾーマ戦で使われている音楽「勇者の挑戦」について考察してみよう。

 この曲を聞いただけでも、ステータスまで覆いかぶさるほど巨大な体躯のラスボスゾーマがふぶきを吐き続け、緑に染まっていくパーティのパロメータや、最初から最後まで愚直に「けんじゃのいし」をかざしっ放しの賢者の姿が脳裏に浮かんでくる人もいるだろう。

 ファミコン音楽の最終到達点のようなこの曲も、もちろん3つの音だけで作られている。

 メインメロディ、ベース音、この2つは外せない。そうすると残りひとつの音は何をやっているかというと、人間の演奏では再現不可能なほど早い速度で2つの音を交互に連続で鳴らしているのである。そうすることによってあくまで同時発声数は3つだが、聴覚的にもっとたくさんのパートが鳴っているかのように錯覚させている。

 また3音以外にノイズパートというものが存在し、多くの場合これはリズム音に使われているのだが、ドラゴンクエストの場合はダメージなどの効果音に使われているため、戦闘曲にリズムパートは使われていない。

 そんなバカな。記憶の中で流れるゾーマ戦のBGMには疾走感たっぷりのリズムがしっかり鳴っている。

 だがこれはベース音の刻み方に秘密があった。ベースが「ドドッド ドドッド ドドッド ドドッド」と小気味よくリズミカルに刻むことにより、ベース音程だけでなく同時にリズムを感じさせることに成功しているのだ。現役ミュージシャンである筆者もドラクエの音楽からたくさんのことを学んだが、アレンジャーを志す方にとってヒントの宝庫である。

 この記事を読んで「勇者の挑戦」が聞きたくなったあなたは、ぜひファミコンの音で聞くことをおすすめする。昨今ではゲーム機の性能も進化し、もはや生演奏と変わらないクォリティの音楽や、生演奏や生歌唱の録音源も簡単に流せる時代である。

 だからこそ、この時代にこんな工夫があったこと、そんな時代にオーケストラをゲーム音楽に持ち込んだ偉大な作曲家がいることを伝えたい。そこには3つの音という制限が生み出したアートが広がっているのだ。

 今日で90歳を迎えたすぎやまこういち氏。ご自身が持つ、最高齢ゲーム音楽製作者のギネス記録をこれからもどんどん更新し続けて我々をワクワクさせてほしいですね!


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Source: 理系にゅーす