神戸市で、川に飛び込もうとした女性を助けたとして、男子大学生が警察から善行表彰を受けた。「感謝されて喜んでいいのかどうか…」とやり切れない思いを口にする。あの日を振り返ってもらった。
■橋の真ん中、欄干によじ登る女性が
2月3日の昼下がり。流通科学大学1年の伊藤光輝さん(19)は自動車教習所から電車で帰宅するため、神戸市北区の神戸電鉄谷上駅前を歩いていた。
この辺りを歩くのは初めてだ。駅前には志染川が流れ、20メートルほどの橋が架かっている。駅を目指して橋に近づくと、約3メートル先の真ん中辺りに女性が1人いた。
若い女性。大人の腰ぐらいの高さがある欄干によじ登っている。「川に落とし物でもしたんかな」と思って見る。水位は低く、コンクリートで舗装された底までの高さは約10メートルあった。「え、高いやん」
■上ずる声で呼び掛け
女性は欄干を乗り越え、川に背を向けて立った。「もしかして、飛び込もうとしている?」とよぎった瞬間、伊藤さんは走りだしていた。駆け寄って、女性の背中に腕を回した。
「大丈夫ですか」「危ないですよ」「一度こっちに戻りましょう」
動転している。声が上ずる。とっさに刺激してはいけないと思い、なるべく落ち着いた口調を心掛けた。
伊藤さんは、5分ほどそうしていた。女性は返事をしなかったが、手すりをつかんで顔をうずめ、静かに泣いていた。
通行人が交番に伝え、駆け付けた警察官に女性は保護された。伊藤さんは「助かった」とほっとした。女性は泣きながら交番へと連れて行かれ、伊藤さんも警察官に状況を説明した。
■大学では心理学を
女性の事情は知らない。大学では心理学を学んでいた。交番から帰宅後、いろいろと考えた。
また死にたいって思うのかな。本当に助けてほしかったんだろうか。なぜ死にたいと思ったのだろう-。
自分も人間関係がうまくいかなかったとき「死んだ方が楽かもしれない」と考えたことはある。でも、それはぼんやりと思ったぐらい。友人に恵まれた大学生活は楽しいし、自ら死ぬのはやっぱり怖い。
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Source: 理系にゅーす