■獄中から届いた死刑囚の手紙は、丁寧な文字でつづられていた
〈毎日、自分が執行されるのではとおびえている。夜が明けるごとに脂汗をかき、針1本が落ちる音も聞き逃すまいと、職員さんの行動に異常なくらい敏感になり、朝食の味が分からないほど緊張する。朝が怖く、憎いとさえ思う〉
獄中から届いた10枚の便箋は丁寧な手書きの文字で埋まっていた。肉筆の主は西日本の拘置所に10年以上、収監されている60代の死刑囚。記者は獄中生活の実態や心情を知るため、支援者を通じて書面取材を申し込み、回答を得た。
文面で強調されていたのは日々襲われる恐怖だった。死刑執行が本人に告知されるのは当日で、朝が多いとされる。刑事収容施設法で執行がないと定められた土日祝や年末年始を除いて安堵(あんど)できる日はなく、精神的に疲弊する姿が文面から浮かぶ。
〈精神をむしばむ人も少なくない。精神的な拷問を耐え忍んだあげく、死という救いしかない。明日はわが身という危機感で、とても平常心は保てない〉
■労役はないが、行動は制限。牧師との面会が月に1度の「おしゃべり」
懲役囚と異なり、労役は課されない。情報公開請求で法務省から入手した「死刑確定者生活の心得」によると、大阪拘置所の場合、起床は午前7時半、就寝は午後9時。入浴(夏以外は週2回)や屋外運動(1日30分)がある一方、「勝手に横たわらない」「むやみに立ち歩かない」など行動は制限される。
死刑囚は記者への回答の中で、読書や室内体操をしたり、週に2回、DVDを視聴したりするなど、独房の暮らしを明かした。面会や文通ができる相手は厳しく制限される。キリスト教の洗礼を受けており、教誨師(きょうかいし)である牧師と月に一度面会するのが「唯一のおしゃべりの機会」という。
〈社会から遮断され、完全に孤立状態。外部との交流を渇望している〉
■遺族への謝罪文は受け取りを拒まれた。般若心経で被害者のことを思う日々
この死刑囚は1990年代、2人を殺害して現金を奪う事件を起こした。逮捕後に遺族に送った謝罪文は受け取りを拒まれ、自身の心情を伝えられていない。一日の始まりと終わりには般若心経を唱え、被害者のことを思っているという。
事件前にはなかった日常のありがたさ、他人の痛みや苦しみを知る心が芽生えて「違う景色が見える」とした上で、今の心情をこうつづっている。
〈事件と自分自身に向き合い、身勝手な冷酷さを責め続けている。少しでも全うな人間になりたい。決してくさらず、最期の日までを生き抜きたい〉
https://approach.yahoo.co.jp/r/QUyHCH?src=https://news.yahoo.co.jp/articles/ea80643ec4184a69e18fb41fcc7c747138a66720&preview=auto
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Source: 理系にゅーす