イノヴェイターとして脂ののった時期にWinny事件で逮捕され、紆余曲折を経て無罪を勝ち取ったものの、あっという間に他界した不世出の天才。金子勇がたどった無念の生涯は、「出る杭が打たれる」の典型といえるだろう。
その社会的損失の大きさを伝えるべく、2018年現在、いろんな立場の人間が表現方法を模索している。なかでもユニークなのが、事件の映画化を目論む古橋智史だ。
「出る杭が打たれない。そういう国にしたいと、本気で考えているんですよね」
古橋はIT系ヴェンチャー企業「スマートキャンプ」を率いる現役の経営者。金子からみて18歳年下の、若きフォロワーだ。彼は仕事の合間にクラウドファンディングで資金を募り、スタッフ集めや脚本づくりに奔走しつつ、金子の知人と会う機会をつくり、その生き様について教えを乞うている。
そんな古橋に手を差し伸べるのは、株式会社Skeed。あのWinnyにおいて問題となった部分を改良・商用化すべく、生前の金子とその仲間が創業したスタートアップだ。代表取締役の明石昌也は、金子の右腕として辣腕を振るった経験をもつ。
「ぜひ金子さんのことを、多くの人に知ってほしい。彼は発想の天才で、Winnyは彼の生んだプロダクトのひとつに過ぎない。なのに、あの事件が、彼から貴重な7年間を奪った。最先端にいる研究者の前途を潰したんです」
わたしたち日本人にとって、それは間違いなく悲劇だった。
7年間を覆ったWinnyという「影」
2002年に発表されるや否や爆発的に普及したファイル共有ソフトWinny1(Winny version1)は、データ転送における優れたアルゴリズムに加え、高い「匿名性」を実現していた。それゆえ、一部のユーザーが違法に入手した映画や音楽などの商用データ、果てはコンピューターウイルスまでWinnyにアップロードし、世界中に拡散するという事件が頻発。その結果、Winny1の開発者である金子までが(厳密にはWinny2を開発したかどで)「著作権法違反幇助」の嫌疑をかけられ、2004年に逮捕、起訴される。
ツールを悪用した人物ではなく、ツールをつくったプログラマーに「悪意があった」とするのは過剰かつ不当な対応だ。そもそもWinny自体は合法なファイルも共有できる。いまでいえば、YouTubeに著作権違反の動画がアップされるたびに、YouTubeの経営者が投獄されるようなものである。
現在では、動画や音楽などの配信サーヴィスに違法なデータがアップロードされた場合、著作権者が申し立てれば運営側が削除する、という対応が一般的だ。ところが当時のWinnyは、問題の起きたファイルを削除する機能を搭載していなかった。金子はWinnyにその機能を付加する方法を考えついていたが、京都府警に拘留されてしまった結果、開発を継続できなくなる(その後、Winnyを引き継いだSkeed社製品に搭載)。
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引用元: ・【Winny開発者】日本が失った天才、金子勇の光と影[11/10]
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Source: 理系にゅーす