1: 2018/07/14(土) 16:12:30.28 ID:CAP_USER
(中略)
■シンギュラリティ論はナンセンス

ガブリエルさんは、自然科学の進歩を基本的には歓迎している。しかし、『なぜ世界は存在しないのか』によれば、自然科学だけが客観的であり、万物の尺度だと主張する「科学主義」は、端的に誤っているという。
その典型が、現実に存在する全てのものは物質的であると考える「唯物論」だ。

唯物論は、人間の思考も、脳の中のニューロンの状態にすぎないと考える。
だとすれば、物質から思考を生み出すこともできることになる。
近い将来、人工知能(AI)が人間の知性を超えるというシンギュラリティ論もまた、唯物論の延長にある。

――未来学者のカーツワイル氏やオックスフォード大学で哲学教授を務めるニック・ボストロム氏らは、近い将来のシンギュラリティを予測しています。あなたは、こうした予測をどのように考えていますか。

ひとことで言えば、そういった考えはすべてばかげているし、ナンセンスです。
ハリー・フランクファートという哲学者の言葉を借りれば「ウ◯コな議論」そのものです。

彼らの根本的な過ちは、知性(インテリジェンス)というものを理解していないことにあります。
この秋にドイツ語で出版される私の新しい本は、「人間とは動物でありたくない動物である」という一文から始まります。
つまり私たちは、自分の中には、非生物学的なものがあると想像している。それが知性です。

私たちの知性は、視覚や触覚などの感覚と同じように、生物学的に複雑な有機体として、物理的な宇宙に適応しています。
その意味で、思考することとは、見ることや触ることと同様、一種の感覚の様式なのです。

思考と脳の関係は、歩くことと靴との関係に似ています。私たちは靴を履いたほうがよく歩けます。
でも、靴自身が歩くわけではありません。同じように、脳があれば、いろいろなことを考えることができますが、脳という物質が考えているわけではないのです。だから、脳は複雑な構造をもつ知性の一部にすぎません。

あるいは、あなたは次の休暇のために、さまざまな条件を考慮して、ビーチの近くにあるホテルに行こうと考え、実際に行くことができます。航空券やホテルを予約するために、インターネットは非常に有用です。
でも、インターネット自体が、ビーチのあるホテルに行こうと考えることはできません。

ですから「人工知能」というものは存在しません。私たちがただそう呼んでいるだけであって、それが知性を持つことはないのです。
AI研究者の誰一人として「知性とは何を意味するのか」について何も教えてくれないことも、人工知能が存在しないことを示す顕著な例でしょう。  

■ニヒリズムに陥る科学主義

科学主義を批判する「ガブリエル哲学」の基本構想は、「世界は存在しない」が「世界以外のすべてのものは存在している」というものだ。
「世界は存在しない」とは、唯物論のように世界をたった一つの原理だけで説明することはできないことをいう。

一方、「世界以外のすべてのものは存在する」とは、例えば「わたしたちの住む惑星、わたしの見るさまざまな夢、進化、水洗トイレ、脱毛症、さまざまな希望、素粒子、それに月面に棲む一角獣さえもが存在」している(『なぜ世界は存在しないのか』)ということだ。

一角獣が存在すると聞いて、びっくりする人も多いに違いない。
その理由を知りたくなった人は、ぜひ本を手にとってもらいたい。

――ユヴァル・ノア・ハラリ氏の『サピエンス全史』が示す未来のシナリオも、シンギュラリティ論とよく似ています。
ハラリ氏によれば、そう遠くない将来、サピエンスが消滅し、サピエンスがさらに進化した超人が誕生するというわけですから。

なぜ『サピエンス全史』に触れたかというと、あなたの『なぜ世界は存在しないのか』と対照的なものの見方が書かれているからです。
ハラリ氏は、国家や企業、民主主義、資本主義など、想像上の秩序はすべて「虚構」であり、自然科学的な事象こそが「客観的」だと言います。
それに対して、あなたの哲学は、自然科学的な事象も、国家や企業、あるいは月面に棲む一角獣も、等しく実在することを論証するものですね。

ハラリと私とを関連付けて質問されたのは初めてのことですが、とても鋭い指摘だと思います。
ハラリは言ってみれば、自然主義、科学主義の司祭のような存在でしょう。
テクノロジーによって人類が消滅し超人が誕生するという彼の本は、聖書のテクノバージョンといえるかもしれません。

ハラリのように、自然科学だけを真実と捉え、それ以外の想像的な事象を虚構と見なす科学主義は、
民主主義の基盤を損なうことにつながります。
というのも、科学主義は、人権や自由、平等といった民主主義を支える価値の体系を信じないニヒリズムに陥ってしまうからです。

民主主義の基盤を掘り崩す3段階の悪役を紹介しましょう。第1段階がペシミスト(悲観主義者)、
第2段階は相対主義者、そして第3段階がニヒリスト(虚無主義者)です。

ペシミストは、北朝鮮のように(人権や民主主義という)価値を共有できない国が存在することに悲観的になっているだけです。
相対主義者はもう少し病が深い。彼らは、どの国もそれぞれ自分たちの価値やモラルがあり、普遍的な価値はないと信じています。
でもこの二者とは、国を問わずに合意できる価値や道徳があることを示す議論はできます。
例えば、子どもを虐待してはいけない、ということは、どの国の人だって賛成するはずです。

ニヒリストが最悪なのは、価値そのものを幻想や虚構だと考えるからです。
民主主義的な価値について話したところで、ニヒリストには空疎な話にしか聞こえない。
これは民主主義にとっては破壊的です。
ドイツのメルケルやカナダのトルドーよりも金正恩のほうが好きなトランプは典型的なニヒリストでしょう。
彼は民主主義的な解決のさじを投げてしまっているわけですから。

続きはソースで

https://giwiz-tpc.c.yimg.jp/q/iwiz-tpc/images/story/2018/7/11/1531287338_1531287312_DSC_1869.JPG 
https://news.yahoo.co.jp/feature/1016 

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引用元: ・【哲学】コンピューターは哲学者に勝てない――気鋭の38歳教授が考える「科学主義」の隘路[07/13]


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Source: 理系にゅーす