「私たちの研究チームの分析で、新たに承認されたがん治療薬の多くに『付加利益』、つまり効くというエビデンス(根拠)がないことがわかりました。それどころか、うち41%は効果が『測定不能かマイナス』、さらに23%は『ごくわずかな効果』しかなかったのです。
いま、がん新薬の薬価は上がる一方で、保険制度を圧迫しています。わが国も例外ではありません。製薬会社が、ほとんど治療につながらないクスリでボロ儲けするのはおかしい」
こう語るのは、オランダでトップ、欧州でも十指に入る名門・ユトレヒト大学の薬剤学研究所で准教授を務める、ローレンス・ブローム氏だ。
今年の春、彼らの一本の論文が医療界に衝撃を与えた。英名門医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」に掲載された「’95年から’20年までに欧州医薬品庁が承認した抗がん剤の付加利益と収益」だ。
内容は、冒頭でブローム氏が述べた通り。過去25年間に欧州医薬品庁(EMA)が承認した、抗がん剤やがん治療薬131のデータを分析したところ、およそ6割が「効果が怪しい」ものだった。にもかかわらず、開発した製薬会社は莫大な利益を得ている
日本でも、皮膚がん・肺がんの新薬「オプジーボ」(小野薬品工業)が承認当初、一年間の治療で約3500万円かかる「超高額薬」と言われて物議を醸した(現在は薬価改定で価格が下がっている)。
●一刻も早く承認するために…
「製薬会社は『がん治療薬の開発には高額な研究開発費がかかるから、薬価を高くしないとコストを回収できない』と主張します。しかし、実際の収益データを分析すると、多くの製薬会社はコストを回収するどころか、大幅に利益を得ていました。
しかも、前述したような効果の乏しいがん治療薬の多くは、『迅速化パスウェイ』という特別なプロセスによって承認されていたこともわかりました。承認を早めるために、治験などで十分なエビデンスが得られていなくてもいい、とする制度です」(ブローム氏)
効果に乏しい抗がん剤やがん治療薬の多くは、「既存のクスリでは治る見込みのない患者」のために開発されているという。確かに、万策尽きた患者にとって新薬はまさに一筋の光だ。とにかく一刻も早く承認するべき、という言い分も、理解できなくはない。
しかし、ブローム氏はこうも主張する。
「製薬会社と政府や規制当局は、国によっては癒着しているところもある。その裏付けを取るのは非常に難しいですが、これほど承認を焦り、しかも製薬会社が莫大な利益を得ているとなると、見過ごすわけにはいきません。私たちの研究をきっかけに、各国でも高額ながん新薬の実態を検証してほしいと思います」
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現代ビジネス 2024/08/06 8:00
https://news.yahoo.co.jp/articles/78c2491d596cea8384cc7b5fe3442146aa0e076c
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Source: 理系にゅーす