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1: 2025/02/14(金) 12:38:23.77
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/170770
 たった一種の生物の存在が「森や川の風景を変える」なんてことがあるのでしょうか。
実は、アメリカのイエローストーン国立公園では、オオカミ(Canis lupus)が再導入されたことで、草原や森林の様子が劇的に変化しました。
オレゴン州立大学のウィリアム・J・リップル(William J. Ripple)氏ら研究チームは、オオカミの再導入後の影響を分析し、
驚くべき「栄養カスケード(trophic cascade)」の効果を明らかにしました。
この研究は、2025年1月14日付の『Global Ecology and Conservation』誌に掲載されています。

■オオカミが消えたら何が起こったのか?
1920年代、イエローストーン国立公園ではオオカミの駆除が進められ、ついには公園内から姿を消しました。
その後、数十年にわたりオオカミがいない状態が続きました。

オオカミの消失後、シカ族のワピチ(学名: Cervus canadensis)の個体数が急増しました。
彼らは安全な公園の中で、堂々と歩き回るようになったのです。
そしてワピチが自由に植生を食べた結果、公園内のヤナギやポプラなどの木々が減少しました。
ただ植物が減っただけではありません。
河川沿いのヤナギの消失はビーバーの減少を招きました。
ビーバーはダムを作り、水流を調整することで多くの生物にとって重要な生息地を提供します。
しかし食料となるヤナギがなくなったことで、ビーバーは姿を消し、湿地が乾燥。川の流れも変化しました。

ビーバーへの影響は1つの例に過ぎず、実際には多方面に大きな影響が及びました。
1つの捕食者の消失が、生態系全体にドミノ倒しのような影響をもたらすこととなったのです。

では、こうした変化を元に戻すにはどうすればよいでしょうか。
イエローストーン国立公園では、1990年代にオオカミを再導入することにしました。
そして、その結果は驚くべきものでした。

■オオカミ再導入がもたらした「奇跡」
1995年から1996年にかけて、オオカミがイエローストーンに再導入されると、ワピチの個体数が減少しただけでなく、その行動も変化しました。
オオカミの存在により、ワピチは特定の場所での採食を避けるようになり、これが植生の回復につながりました。
リップル氏らの研究では、2001年から2020年にかけて、ヤナギの樹冠の体積が約1500%も増加したことが明らかになりました。

最終的にこの変化は、
・ビーバーの個体数回復
・湿地と水辺の環境改善
・鳥類や昆虫の多様性増加
といった好影響を生み出しました。

特にビーバーの復活は重要です。
彼らが作るダムは、湿地の保水能力を高め、さらに多くの生物が生息できる環境を整えます。
また、植物や樹木の再生によって川岸の浸食が穏やかになり、川の流れも変化しました。
川の蛇行が少なく、水路が深くなり、やがて小さな池も出現するようになったのです。
オオカミが戻ることで、川や湿地の生態系が大幅に改善されたのです。

これはまさに「栄養カスケード(Trophic cascade)」の典型例です。
栄養カスケードとは、生態系において捕食者が獲物の個体数や行動を変化させ、それがさらに下位の生物群や環境にまで波及する現象のことを指します。
オオカミの再導入によってワピチの採食行動が変わり、これが植生の回復や地形の変化をもたらしたのです。
1つの捕食者の存在が生態系全体のバランスを大きく左右することを、イエローストーンの奇跡は見事に証明しています。

この研究では、20年という長期的なデータをもとに、生態系の変化を評価し、オオカミの再導入の影響力を示しました。
しかし、研究者たちは「元の状態に完全に戻るわけではない」と指摘しています。
なぜなら、長年にわたる環境の変化によって、かつての湿地は乾燥し、一部の地域では新たな生態系が形成される可能性があるからです。
環境への影響力が大きいため、野生動物の駆除と導入は、慎重でなければいけないのです。

画像(一部のみ、他の画像はソースで)
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Source: 理系にゅーす