◼デジタル全盛でも…4年連続増
学研教育総合研究所の「小学生白書」によると、2024年にそろばんを習っていた小学生は8.0%。コロナ禍で5.8%に落ち込んだが、21年から4年連続で増加し、コロナ禍前の水準を上回った。
東京都港区のマンション一室にあるそろばん教室「旭珠算塾 芝浦教場」。そろばん指導者の樋口賢さん(54)が「7分、よーい、始め!」と告げると、児童が勢いよく玉をはじき始めた。
ここ芝浦教場でも、昨年から入塾する子どもが再び増えている。樋口さんは「そろばんに慣れると、頭の中で玉を動かして暗算ができる」と説明する。
算数が苦手だった小学6年生(11)は指を折って数えていたが、4年前にそろばんを始めたところ、「自然と暗算ができるようになった」。
5歳の次男をそろばん教室に通わせている東京都内の主婦(41)は「受験や将来を考え、そろばんで計算力を身につけさせたいと思った」と話す。
そろばんは、昭和時代の代表的な習い事の一つだった。国の統計によると、盛んだった1986年には教室が全国に1万3010か所あった。
だが、電卓の普及で、「電卓よ、こんにちは。そろばんよ、さようなら」というフレーズが登場。習い事の多様化や後継者不足もあり、教室数は2021年には5227か所へと落ち込んだ。
そんなそろばんが再び注目される背景の一つに、中学受験対策がある。
中学受験では、算数に重きを置く学校が多く、主要4教科の出題で算数の配点を高く設定するケースがみられる。また、「算数1教科」だけの入試を導入する動きも広がってきている。
進学塾「栄光ゼミナール」入試情報センター責任者の藤田利通さんは「算数が得意な子どもは論理的に考える力が高く、学校は伸びしろを期待するのでは」とみる。
全国のそろばん指導者らでつくる公益社団法人「全国珠算教育連盟」(京都)は昨春、東京都内のそろばん教室に通う子どもの保護者ら約350人を対象に意識調査を初めて実施。半数以上の保護者が中学受験を検討していた。保護者らが感じるメリット(複数回答)として、「計算力がついた」が8割を超え、「集中力アップ」が4割近くに上った。
また、調査では全体の4人に3人が「小学1年までに」そろばん学習を開始しており、幼い頃からそろばんに親しむ傾向がうかがえる。玉を操作して計算するそろばんは、幼い子どもにも親しみやすく、数に対する苦手意識を持ちにくいといった効果があるという。
全国珠算教育連盟の本部理事の前田珠樹さん(59)は「小さい頃から始めるほど、暗算方法が身につき、集中力や忍耐力を高める効果も期待できる」と語る。
◼そろばんは世界各国にも広がっている。
普及に努める菅野孝志さん(53)によると、世界100以上の国・地域でそろばん学習が行われている。子どもたちが10進法の位取りを理解するのに適しているからだという。南太平洋に位置するトンガでは、基礎的な計算力を向上させるため、公立小学校でそろばんが必修になっている。
菅野さんは「日本人の計算力は国際的にも評価されており、そろばんへの関心は高い。国際交流のきっかけにもなっている」と話している。
[読売新聞]
2025/4/12(土) 5:00
https://news.yahoo.co.jp/articles/3c60d4874674940702e4773d3471ca9dfbaa559e
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Source: 理系にゅーす