連載の第1回では、ロケットの打ち上げ失敗までの出来事について紹介した。
今回は、ロケットの打ち上げ失敗から、宇宙飛行士はどのようにして生還を果たしたのか。その顛末と、命を救った「緊急救助システム」について取り上げる。
■緊急救助システム (SAS)
ロケットの打ち上げ失敗という大事故にもかかわらず、無事に宇宙飛行士が生還できたのは、ソユーズに搭載されている「SAS」と呼ばれる脱出装置のおかげだった。
SASとはロシア語のSistema Avariynogo Spaseniyaの頭文字から取られており、直訳すると「緊急救助システム」という意味になる。その名のとおり、問題の起きたロケットから、宇宙船ごと宇宙飛行士を引き剥がすように脱出させることで、救助することを目的としたシステムである。
その要となるのが、宇宙船を脱出させるための固体ロケットである。脱出用の固体ロケットは2種類あり、ひとつはロケットの先端にある塔のような部分(エスケープ・タワー)に大き目のメイン・モーターが、もうひとつはフェアリングの側面に小さ目の補助モーターが搭載されている。打ち上げの初期段階では両方を、エスケープ・タワーを分離したあとは補助モーターのみで脱出する。
脱出時にはまず、SASがセンサーなどのデータからロケットの異常を検知すると、即座にこの固体ロケットに点火し、宇宙船を脱出させる。
ちなみにソユーズ宇宙船は3つのモジュール――宇宙飛行士が軌道上で滞在する「軌道モジュール」、打ち上げや帰還時に座る「降下モジュール」、そして太陽電池やスラスターなどが収められた「機械モジュール」――が結合した状態で構成されているが、このうち脱出するのは、降下モジュールと、その前部にくっついている軌道モジュールのみで、機械モジュールはそのままロケット側に残る。
そしてロケットから十分に離れた後、降下モジュールのみが分離され、通常の帰還時のように、パラシュートを開いて降下し、着陸する。着陸場所が山の中、湖や海の上ということもありうるため、あらかじめ船内にはサバイバル・キットが装備されており、ソユーズに乗り込む宇宙飛行士は事前にサバイバルの訓練も受ける。
異常検知やロケット点火などはすべて自動で、宇宙船に乗っている飛行士が手動で起動することはできない。ただし地上からの遠隔操作で起動させることはできる。
また、通常ソユーズ宇宙船が降下する際には、機体は「揚力降下モード」と呼ばれる、機体の姿勢を制御して揚力を発生させることで、宇宙飛行士が受ける加速度(G)を小さくしている。しかし緊急脱出時には、とにかく飛行士の命を助けることのみを考え、弾道降下モードと呼ばれる、機体を回転して安定させ、さらに揚力を発生させず、そのまま突っ込むように降下する。乗り心地は二の次で、大きなGがかかり、後述するように、場合によっては大怪我をすることもある。
■SASによる脱出のシナリオ
SASはロケットの打ち上げの40分前から機能し、飛行中はもちろん、宇宙船の分離まで、あらゆるタイミングで脱出することができるようになっている。
この間、SASがどのように宇宙船を脱出させるかは、大きく4段階に分かれている。
■フェイズI
まず打ち上げ40分前から、打ち上げ1分54秒後までの間にロケットに問題が起これば、ソユーズ宇宙船の降下モジュールと機械モジュールの間の結合が解かれ、フェアリングにある安定翼を展開。そして同時に、エスケープ・タワーのメイン・モーターとフェアリングの補助モーターに点火し、ソユーズ・ロケットから宇宙船を引き剥がす。
ちなみに地上から緊急脱出する際は、高度1~1.5kmまで上昇する。これは爆発するロケットから離れ、なおかつパラシュートを開いて安全に帰還するのに十分な数字である。
続きはソースで
■打ち上げのシーケンスと、その時々での脱出方法を示した図
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https://news.mynavi.jp/article/soyuz-2/
引用元: ・【宇宙開発】ロシアのソユーズ打ち上げ失敗から宇宙飛行士の命を救った脱出装置「SAS」とは?[10/25]
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Source: 理系にゅーす