未着工のリニア中央新幹線南アルプストンネル静岡工区を巡り、大学教授らによる静岡県生物多様性専門部会が25日に開かれた。JR東海はトンネル掘削による南アルプスへの影響として渇水期に枯渇する沢で、動植物が消失する可能性を明らかにした。地形や地質が複雑で事前調査が難しく、影響の予測に不確実性があることも認めた。【山田英之】
JR東海の担当者が出席する生物多様性専門部会は2019年9月以来、1年3カ月ぶり。国土交通省の有識者会議は計7回あったが、いずれも大井川の水問題が中心で、生態系への影響などを話し合う生物多様性の分野が議論されておらず、進捗(しんちょく)が注目されていた。
JR東海はこれまで環境影響評価書に「事業の実施による影響の程度は小さく、重要な魚類の生息環境は保全される」と記載。しかし、今回の専門部会に提出した資料は「希少な生物が生息し、生物多様性が周辺環境の変化の影響を受けやすい脆弱(ぜいじゃく)性を持つ」「生息環境や生息状況に影響が生じた場合、その変化を確認することが地形、気候などの観点で難しい場合がある」と記述が改められた。
地下水位への影響も「地下水位の予測値について、トンネル周辺で局所的に最大300メートル以上低下する」と明記した。また、自然環境への影響として「南アルプスでトンネルを掘削することで地下水位が低下。特に渇水期の沢で、流量減少や枯渇が生じ、動植物の生息・生育環境が著しく変化したり、消失したりする可能性がある」とした。
一方、JR東海は対応策として、ボーリングで地質を把握し、防水シートなどで湧水(ゆうすい)量を低減▽自然由来の重金属を含む排水は濁水処理設備などで処理して河川に放流▽重要な種を移植することで種の消失による影響を代償――などを挙げた。
部会長の板井隆彦・静岡淡水魚研究会会長は部会終了後、「大井川上流で地下水が減り、生物多様性の変化をかなり促すことを危惧している」と述べた。
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[毎日新聞 2020年12月26日 11時45分(最終更新 12月26日 11時45分)
https://mainichi.jp/articles/20201226/k00/00m/020/096000c
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Source: 理系にゅーす