「ウサギ緊急事態宣言」発令のスペイン 食害に頭を抱える農家たち
スペイン各地でたくさんの農家がウサギによる食害に悩まされています。特に私が住んでいるカスティージャ・ラ・マンチャ州はこの被害が特に深刻で、292もの自治体でウサギ緊急事態宣言(狩猟緊急事態宣言)が発令されるほど。「ウサギ緊急事態宣言」と聞くと可愛く感じますが、同州では8万ヘクタールにも渡って被害が確認されており、地元の数千もの農家たちが州政府に対して早急にウサギの調査を進め何かしらの対策をとる様に求めているほか、地元メディアたちは全国各地の農家の苦悩の声を報じています。
ウサギの国スペイン
「スペイン(España)」という国名は、地中海沿いに居住していた民族のフェニキア人によって名付けられたと言われています。意味は「ウサギの土地( i-spn-ya)」。もともとウサギがたくさん生息する土地で彼らと共存して生きてきたスペイン人たちですが、近年では様々な要因が重なりそのバランスが崩れてきているといいます。カスティージャ・ラ・マンチャ州では1ヘクタールあたりに600匹ものウサギが生息しており、去年このウサギによる食害の被害額は5000万ユーロにのぼりました。農園を荒らすウサギはこの’ウサギの土地’にもともと生息していた在来種のウサギではなく、ハイブリットウサギと呼ばれる野ウサギと食用ウサギが混ざった雑種と言われており、これらのウサギは在来種のウサギと比較して食欲旺盛で繁殖力も強いことが近年の被害増加の原因のひとつと考えられています。ウサギたちが好んで食べるのはオリーブやブドウの木、小麦などの穀物、ピスタチオ、アーモンドの木など、どれもスペインを代表する作物ばかり。農家たちは行政がウサギのコントロールを怠ってきた結果だとして、このウサギの繁殖原因の調査や狩猟の許可、損害による補助金制度の導入などを求めています。
ウサギ対策
これまでウサギの食害対策として色々な方法が試されています。しかしウサギが嫌う餌を撒いて追い払う方法はあまり効果がなく、殺兎剤は犬や鷹など他の動物が誤食してしまうケースが相次いで問題になりました。ウサギ侵入防止のためのネットを張るとトラクターの搬入に影響が出てしまうし、電気柵ではうまくすり抜けられてしまいます。巣に入ってウサギを狩るフェレットを農地に放してみても、ハイブリットウサギの巣は迷路の様な複雑な構造になっているためフェレットが迷子になってしまって上手くいきません。
https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/matsuo_a/2023/03/conejo-hibrido.php
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Source: 理系にゅーす