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1: 2024/07/16(火) 07:56:40.16
 音声で聴く書籍「オーディオブック」の利用者が急増している。スマートフォンの普及により環境が整備され、すきま時間を学習や娯楽にも充てられるので、現代人の「タイパ(タイムパフォーマンス)志向」とも合致。出版社も新たな読者層の開拓に期待を寄せる。利用拡大の経緯や使われ方、魅力を探った。(文化芸能部・樋口薫、飯田樹与)
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◆利用者はこの10年で30倍に
 国内でのオーディオブック市場は1980年代以降、カセットやCD形式で展開されてきたが、価格の高さなどから広がらなかった。しかしスマホが普及し、音声をダウンロードして手軽に楽しめるようになったことで利用者が増加。米アマゾンが世界的に展開する「オーディブル」や、国内最大手の「audiobook.jp(オーディオブックジェイピー)」など複数のサービスが利用でき、商品のラインアップも豊富になった。
 audiobook.jpを運営するオトバンク(東京都)の上田渉会長(43)は「特にワイヤレスイヤホンの普及が大きな転機となった」と指摘する。「『耳のすきま時間』が意識されるようになり、そこにオーディオブックがマッチした。時間効率の良さが強みで、3倍速で聴けば、1時間強でビジネス書1冊が読める」。同サービスの会員数は今年、300万人を突破。この10年で約30倍に急拡大している。
◆視覚・読字障害の人などの救済にも
 オーディオブックの普及は、視覚障害やディスレクシア(読字障害)などのある読書困難者の救済につながる側面もある。同社は全国の公共図書館にオーディオブックを提供するサービスも推進。図書館のホームページから検索し、来館することなく視聴できる利点があり、導入自治体が増えている。
 昨年、重い障害のある作家の市川沙央さんが芥川賞を受賞し、読書バリアフリー推進を訴えたことも、出版業界の意識を変えるきっかけとなった。今年4月、作家らでつくる3団体が環境の整備に協力する共同声明を発表。「自作をオーディオブック化したいという声が作家から出るなど、業界として向き合っていこうという機運が高まってきた」(上田会長)
 20年かけて市場開拓を進めてきた上田会長が事業を起こしたのは、読書好きだった祖父の失明がきっかけ。「聴く文化が普及する土台がようやくできあがった」と感慨を込める。
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◆「家事と並行して聴ける」「聴き直しがしづらい」
 4歳と2歳の男児を子育て中の名古屋市の女性会社員(35)は、育休から復帰した昨年8月からオーディブルを利用している。きっかけは市川さんの芥川賞受賞。話題に上る受賞作「ハンチバック」を読んでみたかったが、家事に育児にと忙しく、本を読む時間が取れなかった。出産してから集中力や記憶力が下がり、文字を読み続けるのがつらくなってきたところ、聴く読書に出合った。
 平日はほぼ毎日、スマホにダウンロードした作品を聴きながら片道30分かけて通勤。子どもが寝た後に洗濯物を畳んだり、部屋を片付けたりしながら聴くこともある。オーディブル内の人気ランキングを参考にしながら作品を選んでおり、湊かなえさんや宮部みゆきさんら人気作家の小説を中心に、これまでに17冊を読破ならぬ”聴破”したという。
 「移動中や、単純作業と同時並行して聴けるのが良い。本を読む時間が取れない育児中の人にオススメ」と利点を語る。一方、巻き戻しが10~90秒の設定時間や章ごとにしかできないため、聴き直しづらい点は不満だという。登場人物が多くて込み入った話になるとメモする羽目になったり、聞いたことがない単語は分からないまま終わったりすることも。ただ、サービス自体には満足しているという。定額制の聴き放題プラン(サブスクリプション)が主流となっているオーディオブックの料金体系についても「単行本を何冊も買うよりは安い。今は時間を取って本を読める状況でもないのでありがたい」と話す。
◆利用者の中心は30~40代
 サブスクは、効率よく知識を得たいビジネスパーソンの需要にも合致している。audiobook.jpの利用者は30~40代が多く、よく聴くジャンルも「自己啓発」「ビジネス」「教養」がトップ3を占める。一方、オーディブルでは「文学」「ライトノベル」「ミステリー」がベスト3。サービスによって人気のジャンルが異なる傾向もみられる。
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◆出版業界も積極的「もはや一つの柱」(略)

東京新聞 2024年7月16日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/339414


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Source: 理系にゅーす