■都市部の子供ほど学歴が高い
特に地域間で格差が広がりやすいのが「教育」だ。早稲田大学准教授の松岡亮二さんは、生まれ育った家庭と地域によって、子供の学力には一定の格差があると指摘する。
「親の学歴や収入、職業などを統合した指標を『出身家庭の社会経済的地位(SES)』と呼びます。SESが高い家庭の親は教育熱心で、子供の学力や学歴も高くなる傾向があります。SESが高い両親大卒家庭は東京など三大都市圏に多く居住しています。
一方、両親非大卒の家庭の割合が高い地方では都市部より地域の“教育熱”が低く、私立校や塾、習い事などの選択肢も少ない。そうした地域ではロールモデルになる大卒の大人や大学進学を目指す友人が少なく、学習・進学意欲が高まりづらいと考えられます。地方出身であると都市部の子供より学力や学歴達成という観点では不利な実態があります」
昨今は有名予備校がオンライン授業を取り入れるなど、インターネットの発達によって日本のどこでも同様の教育が受けられる土壌が整いつつある。しかしいくらオンライン化が進んだとしても、それを使いこなして勉強するための原動力となる「意欲」を持てない状況では効果は期待できない。
「地域や家庭の環境によって学習や進学の意欲が高まっていない状態でオンラインのサービスだけ増えても、子供が学習を継続するのは難しいと考えられます。むしろ『機会があるのに勉強しないのは個人の問題』と不毛な自己責任論を強化することになりかねない。どの教育段階でも個人が可能性を最大限に追求できる条件を整備すること、また、いつでも学び直しが可能な生涯教育を拡充することが大切ではないでしょうか」
■ネットワーク格差、恋愛格差も
作家の橘玲さんは、都会と田舎の「ネットワーク格差」を指摘する。
「確かに、インターネットの発達によって日本のどこにいても連絡を取り合うことは容易にできるようになりましたが、知り合いを増やしたり人を紹介してもらったりといった人的なネットワークは、直接会うことでしか広がらない。しかし地方に住むとそもそも出会いの機会が少なく、ネットワークが広がりづらいのです」
橘さんが懸念するのはこうした“ネットワーク格差”が子供の人格形成に大きな影響を与えることだ。
「田舎に行くほど同質性が高くなり、同じような趣味嗜好や生活様式を持つことを強制されやすい。地域によっては、男子はヤンキーに、女子はギャルにならなければ生きていけないという話も聞きます。
一方、都会は友達関係ひとつ取っても多様な選択肢があり、さまざまな属性を持つ人とつきあいながら自分のキャラクターに合った進学先や就職先を選ぶこともできる。“弱いつながり”を介して仕事を得るチャンスもあり、経済的にも成功しやすい傾向にあります」
ベストセラーを連発する橘さん自身も、キャリアをスタートさせたきっかけは、浜松(静岡)から上京して都内の大学を卒業後、飲み会で偶然知り合った出版社の人から「うちで編集者を探しているよ」と言われたことだった。人の数だけチャンスが多いのは事実だろう。
若者にとってはネットワーク格差と同等か、それ以上にシリアスな問題となるのが「恋愛格差」だ。
「地方は進学先の選択肢が限られているため、保育園から高校までほぼ顔見知りの同じメンバーで過ごすことも珍しくなく、自分に合った相手と巡り合う機会が少ない。これは思春期の若者にとって深刻な問題で、新しい出会いを求めて都会に出て行くしかなくなる。地方の若者人口が減少するのは、この恋愛格差の問題が最も大きいと思います」(橘さん)
実際に人口動態統計月報年計(2016年)によると、婚姻率は東京、神奈川、大阪の順に多く、鳥取、島根、高知がワースト3となっている。いくらインターネットが発達しても、友情や恋愛においては生身の関係が重要であるのは不変の事実だろう。※女性セブン2021年12月2日号
(一部略)
マネーポスト11月24日 7:00
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Source: 理系にゅーす