洗濯機、ソファ、テレビ、扇風機…。仁和寺正面の二王門から、歩いて20分ほどにある成就山(じょうじゅさん、標高236メートル)沿いの道路下の斜面には、さまざまなごみが散乱している。「これでも一時期よりは減りました」と、仁和寺管財課の岩崎智大さん(25)がため息交じりにつぶやいた。
成就山は、四国八十八カ所霊場のミニチュア版「御室成就山八十八カ所」として、四国へ巡拝できない人のために文政10(1827)年ごろにつくられた。約3キロの山道に88カ所の堂があり、四国と同じ本尊と弘法大師をまつる。約2時間で回れ、山頂から市内を一望できることから、多くの参拝者が訪れる場だ。
神聖な場にもかかわらず、この山は20年以上前から不法投棄のごみがあふれている。人通りが少ない夜間に捨てられているとみられ、岩崎さんは「飛び地で境内から離れているため、寺にごみを捨てている認識がないのかもしれない」と語る。山中は電気が通っていないため、防犯カメラの設置ができず、注意喚起の立て看板が唯一取られている対策だ。
また、道路から10メートル以上も下の急斜面に投げ捨てられているごみが多く、回収が難しい。ボランティアによる清掃活動も月1回行われているが、作業に危険も伴うため、空き缶など手で拾えるごみに限られる。市も定期的に夜間パトロールを行っているが、改善の兆しは見られない。
令和9年に開山200年を迎えることから、仁和寺は同年までに場内を整備する計画を進めている。ごみ搬出の林道整備に着手し、寄付や写経、護摩木祈願の志納金や祈祷(きとう)料を財源としているものの、収入は新型コロナウイルスにより減少しており、厳しい状況だ。
岩崎さんは「ごみを回収しても、しばらくすればまた捨てられており、いたちごっこの状態。モラルを守ってほしいと切実に思う」と話している。
■沖縄の平和祈念公園や富士山にも
不法投棄の問題は、全国の観光地や名所で起こっている。
沖縄戦最後の激戦地となった沖縄県糸満市摩文仁(まぶに)の平和祈念公園。戦没者を慰霊する場所として知られるが、未収集の戦没者遺骨があるとされる公園南側の崖下には、空き缶やポリ袋が散乱している。遺骨収集のボランティアが清掃活動をするほか、県主催の大規模な回収作業も年に1回行われている。
世界遺産・富士山の麓でも廃タイヤなどのごみが多く、平成28年夏に環境省が実施した清掃活動では、約22トンのごみが回収された。ごみの量は減りつつあるが、複数のNPO団体や自治体が地道に回収せざるを得ない状況が続いている。
環境省の統計では、30年に全国で新たに判明した不法投棄の数量は15・7万トンで、ピークだった15年の74・5万トンより大幅に減少。行政のパトロールや防犯カメラの貸し出しといった対策により、一定の効果が出ているとみられる。
ごみの投棄は廃棄物処理法で禁止され、違反した企業や個人は、5年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金が適用される。警察による摘発も相次いでおり、警視庁は今月、世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産の一つ、「高山社跡」(群馬県藤岡市)近くの造成地に大量のガラスくずを不法投棄したとして、廃棄物処理法違反容疑で男5人を逮捕した。
警察幹部は「家電などの小規模なごみでも、製品番号などから犯人を特定できる。ごみの不法投棄は、量や大きさを問わず犯罪だという認識を持ってほしい」と話している。
https://www.sankei.com/west/news/201128/wst2011280008-n1.html
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Source: 理系にゅーす