石川県輪島市を流れる河原田川。そのすぐ横の仮設住宅「宅田町第2団地」では川の氾濫から一夜明けた22日、住民らが熊手やスコップで軒先や屋内にたまった泥をかき出し、家財が散乱する部屋を片付けた。
◆「前例がないから大丈夫」と言われた
団地に妻(69)と娘(33)の3人で暮らす刺し網漁師の早瀬賢生さん(71)は5月に入居する際、川が増水したらどうなるか、市の担当者に聞いたが「『前例がないから大丈夫』と言われた」。だが、実際に21日は胸の位置まで水位が上がった。「まさかこんなことになるとは。このままほっといたら輪島の市民はいなくなる。早く生活を保障してほしい」と願う。
◆山間部が多く仮設住宅用地の確保が難しい
今回の大雨で床上浸水した石川県内の仮設住宅は、輪島市の5カ所と珠洲市の4カ所。このうち輪島市の3カ所と珠洲市の1カ所はハザードマップで豪雨による洪水の浸水想定区域に含まれていた。その理由について、県建築住宅課の担当者は「能登地方には安全な平地が少なく、必要戸数を確保できなかった」と、山間部が多く用地確保が難しい地域性を挙げる。
県によると、仮設住宅は各市町が建設地を選定した上で、避難誘導に関する入居者への情報提供を条件に建設される。輪島市によると、完成した全ての団地の掲示板に洪水と土砂災害のハザードマップを張っており、鍵を渡す際などに掲示板を見てもらうよう伝え、避難経路は各自で確認してもらっている。一方、浸水や土砂災害の危険性がある仮設住宅で、入居者を集めたリスクの説明会などは行っていないという。
◆「完全に安全な場所に建てるのは不可能」
防災に詳しい静岡大の牛山素行教授(災害情報学)は、仮設住宅がハザードマップの浸水想定区域に建てられていたことについて「個別の事情は承知していないが、建てられる場所が他になかったからではないか」と指摘。「洪水も土砂災害も危険性が低いと言える場所は非常に限定され、全ての仮設住宅を完全に安全な場所に建てることは不可能だ」と強調する。
中小の河川が数多くある能登半島では、浸水想定区域に指定されていなくても、地形的に洪水の可能性がある場所も多い。「ハザードマップの情報を住民に周知し、仮設住宅の場所でどのような災害の危険性があるかを理解しておくことが重要になる」と事前の対策を求めた。
東京新聞 2024年9月23日 18時08分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/356075
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Source: 理系にゅーす