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1: 2025/02/01(土) 00:10:02.29
日本からGAFAMのような企業が生まれないのはなぜなのか。コンサルタントの山口周さんは「創造性が必要な課題において、日本はアメやムチを与えがちだ。だが、それらはいずれも創造性をかき立てるどころか、むしろ創造性を破壊している」という――。

今日、イノベーションは多くの企業において最重要の課題となっています。個人の創造性とイノベーションの関係はそう単純ではなく、個人の創造性が高まったからといってすぐにイノベーションが起きるわけではないのですが、ともあれ「個人の創造性」が必要条件の大きな一部であることは論をまちません。では、個人の創造性を外発的に高めることはできるのでしょうか?

(中略)

彼は、この問題を被験者に与える際、「早く解けた人には報酬を与える」と約束することで、アイデアを得るまでにかかる時間は際立って「長くなる」ことを明らかにしました。

1962年に行われた実験では、平均で3~4分ほど長くかかったという結果が出ています。つまり、報酬を与えることによって、創造的に問題を解決する能力は向上するどころか、むしろ低下してしまうということです。

実は、教育心理学の世界では、この他数多くの実験から、報酬、特に「予告された」報酬は、人間の創造的な問題解決能力を著しく毀損することがわかっています。

(中略)

デシの研究からは、報酬を約束された被験者のパフォーマンスは低下し、予想しうる精神面での損失を最小限に抑えようとしたり、あるいは出来高払いの発想で行動したりするようになることがわかっています。

つまり、質の高いものを生み出すためにできるだけ努力しようということではなく、最も少ない努力で最も多くの報酬を得られるために何でもやるようになるわけです。加えて、選択の余地が与えられれば、そのタスクを遂行することで自分のスキルや知識を高められるような挑戦や機会を与えてくれる課題ではなく、最も報酬が多くもらえる課題を選ぶようになります。

これらの実験結果は、通常ビジネスの世界で常識として行われている報酬政策が、意味がないどころかむしろ組織の創造性を低下させていることを示唆しています。つまり「アメ」は組織の創造性を高める上では意味がないどころか、むしろ害悪を及ぼしている、ということです。

(中略)

人に創造性を発揮させようとした場合、報酬(特に予告された報酬)は、効果がないどころではなく、むしろ人や組織の創造性を破壊してしまう、ということです。人に創造性を発揮させようとした場合、報酬=アメはむしろ逆効果になる。

では一方の「ムチ」はどうなのでしょうか?

結論から言えば、こちらも心理学の知見からはどうも分が悪いようです。もともと脳には、確実なものと不確実なものをバランスさせる一種のアカウンティングシステムという側面があります。何かにチャレンジするというのは不確実な行為ですからこれをバランスさせるためには「確実な何か」が必要になります。ここで問題になってくるのが「セキュアベース」という概念です。

幼児の発達過程において、幼児が未知の領域を探索するには、心理的なセキュアベースが必要になる、という説を唱えたのはイギリスの心理学者、ジョン・ボウルビィでした。彼は、幼児が保護者に示す親愛の情、そこから切り離されまいとする感情を「愛着=アタッチメント」と名付けました。そして、そのような愛着を寄せられる保護者が、幼児の心理的なセキュアベースとなり、これがあるからこそ、幼児は未知の世界を思う存分探索できる、という説を主張したのです。

これを援用して考えてみれば、一度大きな失敗をして×印がついてしまうと会社の中で出世できないという考え方が支配的な日本よりも、どんどん転職・起業して失敗したらまたチャレンジすればいいといった考え方が支配的なアメリカの方が、セキュアベースがより強固であり、であればこそ幼児と同じように人は未知の世界へと思う存分挑戦できるのだ、という考え方が導き出されることになります。

つまり、人が創造性を発揮してリスクを冒すためには「アメ」も「ムチ」も有効ではなく、そのような挑戦が許される風土が必要で、更にその風土の中で人が敢えてリスクを冒すのは「アメ」が欲しいからではなく、「ムチ」が怖いからでもなく、ただ単に「自分がそうしたいから」ということです。

(全文はこちら)
https://president.jp/articles/-/90805?page=1


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Source: 理系にゅーす