問題となっているのはアフリカマイマイと呼ばれる東アフリカ原産のカタツムリで、2011年から懸案となっていた。 
 最大で体長20センチを超え、農作物を食い荒らすほか、脳炎と髄膜炎の原因となる。 
家屋への被害も報告されており、外壁の仕上げ材であるスタッコ(化粧しっくい)を食い荒らし、あとには異臭のするフンを線状に残す。
 現地を悩ませたアフリカマイマイだが、日本円にして数十億円を投じた大規模な駆除プログラムが功を奏し、フロリダ州の農業・消費者サービス局は10月上旬、州内での根絶を宣言した。 
 過去3年間に目撃例が出ていないことで、根絶要件を満たした。州内での発見から10年越しの悲願達成となる。 
 農作物にも深刻なダメージを与えるアフリカマイマイだが、最も厄介なのは人体への影響だ。 
 カタツムリやナメクジなどは一般に寄生虫の中間宿主となる場合があり、アフリカマイマイも例外ではない。 
 アフリカマイマイがネズミのフンを食べることで、線虫の一種である広東住血線虫を取り込んでいる場合がある。 
 線虫は非常に小さく、人体への感染力をもつ「第3期幼虫」の段階で体長0.5ミリ程度だ。 
 アフリカマイマイの体液を通じて人体に吸収されると、血液に運ばれて人間の脳や脊髄などに侵入する。 
 脳と脳の保護層である髄膜に炎症を生じ、激しい頭痛や嘔吐感などを招くほか、まれに失明や死亡などに至ることがある。 
 アフリカマイマイは日本にも生息する。 
 1930年代にシンガポールから台湾経由で持ち込まれ、沖縄諸島や鹿児島などに定着した。 
 カタツムリを生食する機会はあまりないかもしれないが、這ったあとの葉に残る体液にも感染性の微小な寄生虫が含まれることがある。 
 体液に触れた手で顔を触ったり、体液の残る葉をサラダなどの形で生食したりしないよう注意が求められる。 
 フロリダにおいてアフリカマイマイは、そのしぶとい抵抗力で住民たちを苦しめてきた。 
 雌雄同体のカタツムリは、2匹さえいればすぐに繁殖することができる。 
 ことアフリカマイマイは産卵数が非常に多く、1年で最大1200個を土中に生みつける。 
 米CBSマイアミは、自然界に捕食者がいないこととあわせ、「指数関数的に増殖する」と報じる。 
 また、夜行性であり、日中の目撃情報に乏しいことも駆除の障害となってきた。 
 通常のカタツムリは低木の上などで生活するが、アフリカマイマイは主に地上で草葉に隠れて行動する。 
 天然の森林だけでなく、手入れされた庭から野外に放置されたガラクタの山まであらゆるところに棲みついており、徹底した発見と駆除が難しい。 
 暑さと乾燥に対しても強い耐性があり、少々気温が高いくらいでは個体数を減らすことがない。 
 土を掘って身を隠し、涼しく湿った環境で高温をやり過ごすことができるためだ。 
 フロリダが雨季に入る6月以降は、土のなかからぞろぞろと一斉に湧き出てくる光景がみられる。 
 フロリダは数十年前にもアフリカマイマイを根絶しており、今回の成功は2度目となる。 
 以前の大繁殖については、ハワイ土産が発端となったことがわかっている。 
 1966年にハワイから戻った幼い子供が、南フロリダにある祖母に3匹を土産として贈った。 
 祖母が裏庭に放したところ急速に殖え、1975年には州内で数千匹が駆除される事態となる。 
 2011年から始まった今回の拡大については、はっきりとしたきっかけがわかっていない。 
 マイアミ・ヘラルド紙は、2010年にナイジェリアから数十匹が密輸され、カルト団体がその粘液を治癒の儀式に使っていたと報じている。 
 一方、これとは関係なく貨物などに紛れて到来したとする見解もあるようだ。 
 アフリカマイマイは世界的に問題のある外来種となっており、前述のように日本の南部にも分布する。 
 また、この種に限らず、一部のカタツムリやナメクジなどは寄生虫の中間宿主となり得る。 
 生き物と触れ合いたくなる気持ちは自然なものだが、安全上、極力素手で触らないように気をつけたい。 
 2021年10月21日(木)17時50分 
 https://www.newsweekjapan.jp/amp/stories/world/2021/10/2010-8.php 
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Source: 理系にゅーす

