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図3:CT89のゲノム配列を用いて作成された系統樹
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概要
過去に日本列島で生活していた縄文人(1)のゲノム配列(2)を調べることにより、縄文人のルーツや目の色、お酒に強いかなど、さまざまなことがわかってきました。一方で、縄文人がどのようなウイルスに感染していたのかをはじめとしてわからないことも種々残されています。
情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の西村瑠佳さん (総研大遺伝学専攻大学院生) と井ノ上逸朗教授らの研究グループは、縄文人の歯髄から得られたDNAを用い、そこに含まれるウイルスのゲノム配列を決定し、解析を行いました。その結果、11種類のウイルスのゲノム配列が見つかりました。中でもSiphovirus contig89 (CT89) (3)と呼ばれるヒトの口腔内に生息するウイルスについては完全長のゲノム配列データを得ることができました。さらに現代のCT89ウイルスとゲノム配列を比較した結果、本研究で見つかったCT89のゲノム配列は、CT89の祖先型ゲノム配列を反映していることが示唆されました。
今後は、CT89ウイルスがどれくらいの速さで進化してきたのか、どのような進化過程を辿ったのかなどを詳細に解析するとともに、糞石をはじめとする縄文人化石の他の部位にも注目し、縄文人に感染していたと思われる古代ウイルスを多く見つけていく予定です。
古代人骨の化石に残存するDNAを抽出し、そのゲノム配列を調べることで、どの生物由来のDNAか推定できる。多くのDNAは古代人に由来し、それらの情報によって古代人のルーツや表現型などの解析が盛んに行われてきた。
一方で、古代人骨からDNAを採取すると、古代人に感染していた細菌やウイルスに由来するDNAも含まれていることがわかってきた。細菌やウイルスのゲノム情報に注目することで、古代人の生活様式や病気、ウイルス進化について推定できる。
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研究の詳細
研究の背景
古代人骨の化石にはDNAが残存しています。このDNAを採取すると、古代人由来のDNAだけではなく、古代人に感染していたと考えられる細菌やウイルスのDNAも一緒に採取されてくることがわかっています。このウイルスDNAに注目し、古代から現代にかけて起こった塩基配列の変化を調べることによって、ウイルスがどのような進化を遂げたのかを考察することができます。すなわち、このように古代人骨の化石から採取したウイルスの塩基配列を現代のウイルスの塩基配列と比較することで、現代のウイルスの塩基配列のみに注目した際に生じる時間的なバイアスを排除した進化過程の推定が可能になるのです。しかしながら、日本列島で過去に生活していた縄文人に感染していたウイルスをはじめとする微生物の研究は進んでいませんでした。そこで、本研究チームは、縄文人にどのようなウイルスが感染していて、そのウイルスはどのように進化してきたのかを解き明かすことに挑戦しました。
本研究の成果
縄文人骨の歯髄に含まれる全てのDNAの塩基配列を次世代シークエンサー(4)で決定しました。その中で現代のウイルスと類似の塩基配列を持つゲノム配列を探索したところ、11種類のウイルスのゲノム配列を見つけることができました。中でも約3800年前の北海道船泊遺跡の縄文人骨から見つかったSiphovirus contig89 (CT89) というウイルスはほぼ完全なゲノム配列が復元できました。このCT89はヒト口腔内の細菌に感染するファージ(5)であることがわかっています。38から完全長のファージ配列を再構成した例は世界で初めてです。さらに、現生のCT89のゲノムは部分配列しかデータベース上に登録されていませんでしたが、今回の解析により、未知の領域の配列も明らかにすることができたのです(図2)。
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今後の期待
本研究により、縄文人の口腔内に含まれるウイルスを初めて明らかにすることができました。この成果は縄文人をはじめとする古代人に感染していた微生物に関する研究の先駆けとなるものです。今後は、得られたウイルス情報をもとに、ウイルス進化に関する知見を増やすことを目指します。
本成果は、ウイルスの起源を解き明かすことに寄与するだけでなく、感染症を引き起こすウイルス進化の予想につながることが期待されます。
2020.09.30
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Source: 理系にゅーす

