ビタミンDが細胞老化の指標とされるテロメア短縮を抑制し、生物学的な老化の進行を遅らせる可能性があるという新たな研究結果が示された。
年齢は、生まれてから何年経ったかという「暦年齢(chronological age)」で測られるのが一般的だ。しかし暦年齢は健康状態や生活習慣、遺伝、後成遺伝学(エピジェネティクス)、環境要因などを反映していない。
一方で生物学的年齢(biological age)は、バイオマーカーや後成遺伝学的(エピジェネティック/epigenetics)な変化、生理的要因などに基づいて測定され、より個人の実態に即した老化の指標となる。
科学界では、生物学的年齢は個々によって異なるため、ヒトの老化の過程をより細やかかつ正確に捉える手段として注目されている。
テロメアはDNA配列とタンパク質で構成され、染色体の末端を保護する「キャップ」の役割を果たしている。
細胞分裂でDNAがコピーされるたびに短くなっていくため、テロメアの長さが細胞の生物学的年齢を示す有効な指標とされている。
今回の「ランダム化二重盲検プラセボ対照試験(RDB)」は、ハーバード大学の関連病院であるマサチューセッツ総合病院ブリガム病院、ジョージア医科大学(オーガスタ大学)が実施した大規模調査「VITAL試験」の一環として行われた。
被験者の総数は2万5871人で、そのうち55歳以上の女性および50歳以上の男性の約1000人が今回のテロメア分析の対象となった。
その結果、ビタミンDのサプリメントを摂取したグループでは、プラセボを摂取したグループに比べて、テロメアの短縮が有意に抑えられていたことが2年ごとの測定によって判明した。
一方、オメガ3脂肪酸の摂取はテロメアの長さには明確な影響を与えていなかった。
テロメアは細胞分裂のたびに少しずつ短くなっていくが、これは自然な老化の一部であり、様々な病気のリスク増大につながっていく。そして、それが進むと細胞分裂が終わり、死に至るとされる。
今回の研究では、ビタミンDの摂取によって約3年分のテロメアの老化が防がれたと研究チームは結論づけている。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/lifestyle/2025/05/553206.php
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Source: 理系にゅーす